エピローグ・決算!休暇

 

僕たちが住んでいた貸別荘。六人まで暮らせる家を四人で使っていた。

 

日本に帰っているとき「決算!忠臣蔵」という映画を見た。浪々の身となった赤穂浪士に残された金は限られていた。その金をやりくりして、何とか「討ち入り」に漕ぎつけるという話。何か出来事がある度に、減っていく金額がデジタルで表示されるのが面白かった。

さて、休暇の最終日、九日目、僕たちは再び荷物を車に積み込んで、十時にペランポートを出発。元来た道を東に向かう。夕方五時、ロンドンでスミレを降ろし、六時ごろ、ハートフォードシャーの自宅に戻った。

帰った夜、休暇で使った金の精算をしてみた。

「『決算!休暇』の始まり始まり。」

今回は、六人まで住める、かなり大きな貸別荘を、九日間に渡って借りていたので、それだけで日本円にして、十五万円ほどの金を使っていた。しかし、四人で割ると一人当たり四万円弱。九日間の滞在費としては、それほど高いものではないと思う。これが一番の出費。それと、往復千キロメートルに及ぶ移動のためのガソリン代として、一万円ほど使っていた。

 それ以外は・・・と探してみても、まとまった出費は見つからない。スーパーでの食費が、一日当り、二、三千円というところ。しかし、家にいても、それくらいの食費はかかる。つまり、宿代と交通費以外、ほとんど金を使っていなかったのである。

「安上がりの休暇、これは、コーヴィッド十九のお陰やな。」

と妻に言う。レストラン、パブは閉まっていたので、外食が出来ない。そして、「密」を避けるためでもないが、主な活動は海岸のトレッキング。現地で金を使う要素がなかったのだ。

「休暇のときまで自炊!?」

と言われる方がいるかも知れないが、うちの場合、妻と僕が一日交代で夕食を作っていたので、それほど負担にはなっていなかった。そして、僕は元々、履歴書に「趣味:料理」と書く人だし、外食するより、家でまったりとしながら飯を食うのが好きな人なのである。

 僕がコーンウォールで作った料理、決して特別なものではない。「キムチ鍋」、「日本のカレー」、「野菜いっぱい焼きそば」、「地中海風マカロニサラダ」、そんなもの。二度ロブスターを食べた以外は、「ご馳走」とは言い難い。しかし、サンドイッチでも握り飯でも、海辺で食べると美味しいように、「普段は別々に住んでいる家族が別荘に一同に会して食事」というシチュエーションでは、まあ、何を食べても美味しく感じるのである。

 幸い天気もよく、海の色もきれいで、

「コーンウォールも捨てたもんやない。」

と思った。しかし、昔毎年のように訪れた、ギリシアの島での休暇にも、やはり憧れがある。あの地中海の乾いた風、保証された晴天、エーゲ海のコバルトブルー・・・今、行くことができないだけに、余計行きたくなる。コーンウォールから帰った翌週、僕は、自分の食事当番のとき、ギリシア料理を作り続けた。せめて食事だけでも、気分はギリシア!

 

 

この景色、ギリシアと似ているのだが、やはり気温と海の色が・・・

 

<了>

 

戻る