卒業写真
世界遺産に指定されているダーラム大聖堂とその周辺。
僕が一緒にコルシカに行かないと、マユミが現地での運転を始め、一切を取り仕切らねばならない。それで、ちょっと不満そうで、ちょっと考えていたが、最終的には彼女のオーケーが出た
二週間ぶりのロンドン。ここのところロンドンは曇っていて雨も多いらしい。気温も低く、寒いくらい。冷やしうどんを食う。久しぶりの醤油味が心に沁みる。日本のアマゾンで買って、義母に転送してもらった「ハイファイセット」のＣＤが届いている。さっそくリビングルームでかけてみる。
「悲しいことがあると、開く皮の表紙、卒業写真のあの人は、優しい目をしてる」
「卒業写真」の歌詞がまた心に沁みる。やはり自分の家はよい。
土曜日、朝起きて、早速日本行きの切符をインターネットで捜す。明日にでも発ちたいが、明日はスミレの荷物を取りにダーラムまで往復しなければならない。また、今回の出張はコンサル業務が多かったので、その報告書をまとめてユーザーに提出しなければならない。日本に発つのは水曜日から木曜日ということで安い切符を捜したら、木曜日の朝のオランダ航空の切符が五百六十ポンド（約八万円）で手に入った。月曜日から三日あれば、仕事は片付くだろう。
久々にいつものプールへ行って泳ぐ。やはり、コースロープで縦に区切られたプールは何といっても泳ぎ易い。
正午頃、つまり日本の夜、母に電話を入れる。父の肺炎は治まったが、二週間以上に渡る絶食のあと、どのようにして口から食物を取るようにするのかが課題だという。点滴での栄養補給はもう限界に来ており、もし口から栄養が取れなければ、何らかの手段を考えなければならないとのことだった。
久々の母からの直接の説明で、少しはよく理解できたが、やはりここは自分の目で見ないと、本当に父がどんな状態かは分からない。
ピアノの練習をして、その後昼寝をする。明日は、五百キロ近く離れたダーラムまで車で日帰りの往復だ。朝早く発たなければならない。八時過ぎには布団に入り、できるだけ早く眠ろうとする。幸いドイツ生活で身についた一時間の「時差」のせいで、直ぐに眠れた。来週もハードな週になりそう、とにかくよく眠っておかなければ。
日曜日、四時過ぎに起きて、マユミとふたりで五時前にロンドンを出発する。スミレは現在ダーラム大学の寮に住んでいるが、あと一週間で夏休みに入る。そうすると、寮の部屋を空にしなくてはならないという。大学が夏の間寮の部屋をサマースクールなど別の目的に使うためらしい。それで、スミレの荷物を取りに行かなければならないのだ。
早朝で、殆どガラガラの高速道路一号線をひたすら北上する。工事の場所以外は、車のスピードを一定に保つクルーズコントローラーを時速百二十キロにセットしてアクセルペダルから足を離したまま。
良い雰囲気の街でお勧めしたいが、ロンドンから片道五百キロはちと遠い。