サイクリング
早朝サイクリング、マリナ・ベイに到着。
土曜日は、朝からサイクリングをすることになっていた。七時過ぎにホテルを出て、朝食を食べて、ワタルのコンドに向かう。彼の住まいは、町の中心「オーチャード」から歩いて十五分くらい。かつての米大使館の跡地に作られた二十数階建ての、日本で言う「タワマン」、彼は五階に住んでいる。今回のサイクリングでは、街角で借りられるレンタサイクル、ロンドンで言う「ボリスバイク」を使うことになっている。(ボリス・ジョンソン元首相がロンドン市長時代に導入したシステムなので、こう呼ばれる。)
八時過ぎに、息子の家を出て、コンドのゲートの前にある、レンタサイクル駐輪場に向かう。そこで、息子、妻、娘、僕のために、四台の自転車を借りる。息子は携帯のアプリを操作して、自転車を借りる手続きをしている。息子の自転車だけは、後ろに子供用の席があり、そこにエンゾーが座る。
「出発進行!」
道を知っている息子が先頭を走り、僕たち英国組がそれに続く。どんな道を通ったのか、詳しくは分からないが、シンガポール川に出て、それにそって下流に向かったのだと思う。見覚えのあるロバート・キーなどを通って、一時間ほどでマリナ・ベイに着いた。「天狗の下駄」のような「マリナ・ベイ・サンズ」の前で休憩。土曜日の朝、ウォーキングのイベントがあるのか、同じTシャツを着た人々が、何百人も歩いている。池に咲いている、紫色のスイレンが美しい。エンゾーも、色々な人と、色々な景色に出会えて、楽しそうである。
かなり涼しく感じる。気温は三十度前後。このくらいだと、自転車で走っていても、バテるということもない。夏の京都の暑さを経験した僕にとっては、心地のよい気候である。走っていると、朝の風が身体に当たるのが気持ちいい。
「なんで、北緯三十五度の京都のほうが、赤道直下のシンガポールより暑いねん。」
と思ってしまうが、熱帯でも、海の近くというのは、意外に暑くないようだ。
トトロのポスターがあり「吉卜力」と書かれている。中国語で読むと「ジー、ブー、リー」。そうか、「ジブリ」の展覧会を、近くの「アート・サイエンス博物館」でやっているのだ。
十五分ほど休憩した後、マリナ・ベイ地区を走る。途中、「水の出る公園」があった。公園の中には沢山の噴水があり、そこから水が噴き出す。子供たちが、その噴水の中を走り回って遊べるというもの。エンゾーも服を脱いで、水の中に飛び出して行った。時々あちこちから吹き上げる水、キャーキャー言いながら遊んでいる。それを見ながら、エンゾーくらいの息子を遊ばせているドイツ人の父親と話していた。
一時間ほど「水の出る公園」で遊んだ後、近くの地下鉄の駅まで行き、そこで自転車を置く。レンタル自転車というのは、どこでも乗り捨てられるから、こんなとき便利だ。そこから地下鉄でダウンタウンまでいき、またホーカーセンターで昼食を食べた。食事が終わるころ、ゾーイが車で迎えに来た。さんざん遊びまわったエンゾーは疲れ果てて眠ってしまった。
水の出る公園。大喜びのエンゾー。