伏見稲荷に適した服装
嵐山の竹林で。中国でも竹は多く植えられ、タケノコは常に食べられているとのこと。
「日本にいる間は日本の物を食べたいの。」
とエレンさん。一生に何度も来られる場所じゃないものね。日本の良さを味わい尽くそうというわけだ。この「気合」というか「気迫」、披露宴の海外組参加者から常に感じていた。と言うことは、宿に純京都風町家を選んだのも、正解だったかも。
一時半、清水寺の三重塔の下で、ゾーイとワタルに会った。ゾーイも、普通の顔色に戻っていた。僕とハンさん夫妻は、それまでに、清水寺を一通り見ていた。残念ながら、
「清水の舞台から飛び降りるつもりで・・・」
のフレーズで有名は「舞台」は、改修中。カバーが掛けられていた。
「改修にはまだ数カ月かかります。東京オリンピックに間に合うとのことですが。」
とMさん。なるほど、何でも「東京オリンピック」なんだ。
五人を乗せて伏見稲荷に向かう。あの、オレンジ色の鳥居のトンネルは、超現実的な風景で、外国人観光客には大人気。金閣寺を抜いて、京都観光スポットのベストワンに輝いたことがあるという。僕の高校は伏見にあり、伏見稲荷は男女カップルのデートコースだった。僕も当時・・・それは秘密!
伏見稲荷に着き、新たに水を買って歩き始める。もうビッシリと鳥居が立っており、その間に隙間などないような気がするのだが、僅かな隙間に新しい鳥居を立てる作業が行われていた。
「僕たち山頂まで行ってくるから、パパはここで休んでいていいよ。」
とワタル。有難いお言葉。僕は道のわきの石に座り、扇子を広げて風を送る。その日の最高気温は、予報通り三十三度まで上がったそう。この気温で山登りはちょっときつい。目の前を通り過ぎる人々を眺めている。和服を着た女性観光客が結構いるのである。この山道を、この気温の中、着物姿で、草履を履いて歩く。その「気合」は分かるけど、あまり適した服装とは言えないと思う。
十分ほどして、ワタルたちが上から戻ってきた。
「あれっ、頂上まで行かへんかったん?」
「もうこれ以上はちょっと無理。」
と顔から汗を滴らせたエレンさんが言った。山を下りる。今回は、M運転手は下で待っていてもらっているので、あと十分くらいで着くということころで、
「もう十分で戻りますから、エアコン入れといてね。」
と電話をする。涼しい車の中に入ると、やっと汗が引く。
帰り道、車の中で、ワタルが突然、
「僕たち、明日朝七時に旅館を出て、『熊野古道』に向かうから、ハンさんたちをお願いね。」
と言い出す。ハンさんたちの出発は午後だという、それで、僕のハンさんご夫婦との濃密な時間は、もう半日続くことになった。
伏見稲荷本殿の前で。これから稲荷山に登ります。