ラグビーW杯
パーティーではもちろんこの方も。プロ中のプロなんだけど、今回はお金を払わなくても聞けちゃう。
「あなたは京都担当ね。私は金沢を担当するから。」
と妻が「仕切り」を決めた。ゾーイとワタル、ゾーイのご両親は、水曜日に羽田に着き、木、金と東京を観光した後、土曜日は金沢。日曜日が披露宴で、月曜日に京都に移動。水曜日に京都を発つ予定になっていた。そのアテンドの分担を僕たち夫婦は決めたのだ。僕は土曜日の夕方に金沢に入った。その日は、昼間、妻がハンさんご夫婦を、兼六園、金沢城、東の茶屋街などに案内してくれていた。
金沢での披露宴の翌日、僕は午前中、一足先に金沢を出た。昨夜三時間ぐらいしか寝ていないので、少し頭がフラフラする。列車の中で寝ていこうと思うが、そんなときほど、気持ちが高ぶって眠れない。昨夜のアドレナリンがまだ残っているのかな。
「ありゃ〜、何じゃこら。」
昼過ぎに京都駅に着いて驚いた。外国人が余りに多いからである。京都は観光都市なので、元々外国人は多い。しかし、その日、駅のコンコースを歩いている人たちを見ると、日本人、外国人が本当に「半々」なのである。ラグビーのユニフォームを着ている人も多い。その人たちはラグビー・ワールドカップの観戦に来た人たちだろう。
実は、僕にとっては「恨みのW杯」なのである。飛行機の切符を取ろうとしたとき、えらく高かった。通常九月になると、航空運賃はオフシーズンで下がるものなのに。後で調べてみると、「W杯」の期間と、僕たちが日本にいる期間がちょうど重なるのであった。稼ぎ時なので、航空会社も強気、特別料金なのだ。
一度実家に戻って、少し休み、再び京都駅へ。六時過ぎの列車で到着するワタル夫妻と、ハン夫妻を迎えに行く。金沢駅では妻が見送っているはずである。「サンダーバード」から、四人が大きな荷物を持って降りてきた。ホームのエレベーターの位置など、既に「下見」が済んでいるので、自分で言うのも何だが、全てがスムーズである。
旅館と夕食に行くために、タクシー二台に分乗。僕の乗らない一台目の運転手には、行先の書いたメモを渡した。僕のタクシーには、ハンさん夫妻が乗っている。
「この方たち、息子の嫁のご両親なんですよ。」
と運転手に言うと、
「ええっ、お客さん、旅行会社の添乗員と違うんですか?」
と驚かれた。まあ、今はそのようなものだけど。
「韓先生、金沢で何かお土産を買いましたか?」
とハンさんに尋ねる。「ジュウグウショウ」を買ったという。
「中国語で『ジュウ』は『九』、『グウ』は『谷』だから・・・分かった、九谷焼や!」
メモ用紙に「九谷焼」と書いてハンさんに見せる。ハンさんがうなずく。そんな会話をしているうちに、降りる場所になった。運転手氏が「同情の眼差し」で僕を見つめて言った。
「お客さん、大変な生活を送ってはるんやね。」
披露宴が終わって、惜しみない拍手の中会場を去る二人。しかし、二次会、三次会と、朝まで続いたのだった。